韓国ではK-POPアイドルよりも高い人気を獲得しているとされる音楽ジャンル「トロット」。一昔前までは中高年層のための音楽ジャンルだったが、今では人気K-POPアイドルがこぞってバラエティ番組などでトロットを歌い、中毒性のあるメロディーと軽快なリズムが若者の心をワシ掴みにしている。
そんな若者のトロット・ブームのきっかけを作った一人が、日本でもその名を知らない者はいない人気グループ「TWICE」のメンバーであることをご存じだろうか。
その人物とは、TWICEのリーダーとして知られるジヒョだ。
ジヒョはTWICEを輩出したオーディション番組『SIXTEEN』(2015年放送)でトロット歌手ホン・ジニョンの代表曲『愛のバッテリー』を披露し、視聴者の熱い反応を引き出した。
同曲は韓国で“2000年代以降のトロットを代表する曲”として知られており、軽快な曲調とノスタルジーあふれる歌詞がリリース直後から現在に至るまで絶大な人気を獲得している。そんな『愛のバッテリー』がアイドルのオーディション番組でお披露目されたとあれば、アイドルを夢見る若い世代の目に留まるのはごく自然なことだろう。
さらにいえば、ジヒョはオーディション当時から高い歌唱力と周囲を笑顔にする明るい性格で多くのファンを獲得している。つまり、ジヒョのキャラクターもまた、トロットと良い相乗効果を生み出したようだ。
ちなみに『SIXTEEN』以降、韓国では『愛のバッテリー』が10代をはじめとした若い女性のあいだで一層親しまれるようになった。
2018年に放送された韓国の人気オーディション番組『PRODUSE 48』でも、のちにIZ*ONEのメンバーに選ばれたチェ・イェナとアン・ユジン(現IVEメンバー)がノリノリで『愛のバッテリー』を歌う動画が反響を呼んでいる。
このように、アイドルがトロットを歌うパフォーマンスは韓国で徐々に定番化していった。現在は若年層の間でもカラオケで必ず盛り上がるジャンルとしてトロットが定着しており、韓国のネット上では『カラオケにおすすめのトロット曲一挙紹介』『必ず盛り上がるトロット〇選』といったトロットに特化したまとめサイトも多数見られるほどだ。
加えて、最近はアイドルのトロット歌手転向も目立つ。
ホン・ジユン、カン・ヘヨン、ソン・ミンギョンなど、2020年以降にトロット歌手として再スタートを切った元アイドルは思いつくだけでも3人は挙げられる。いずれも大手芸能事務所の練習生出身、および実際にアイドルとして活動したのちにトロット歌手となり、第二の歌手人生を謳歌しているところだ。
彼女たちがこれまでリリースしたトロット曲のミュージックビデオやパフォーマンス映像を見ると、トロット独自の曲調はそのままに、衣装や振り付けは今時のK-POPアイドルを思わせるほど洗練されている。トロットが時代を経て、より幅広い世代に親しみやすいものに進化を遂げていることは明らかだ。
このように、韓国で日に日に勢いを増しているトロットのオーディション番組が、この冬には日本でもオンエアされる。
その名も『トロット・ガールズ・ジャパン』。今冬にWOWOWで無料放送・無料配信されるとともに、YouTube、TikTok、Instagram、X(旧Twitter)といったSNSでも幅広い展開が準備されている一大オーディションが、日本で行われているという。
K-POPが深く浸透している日本だけに、若者たちの間でもトロットが受け入れられる下地は十分にある。日本でもトロット・ブームが訪れるのも、もしかしたら時間の問題なのかもしれない。
文=姜 由奈
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