「バリアフリー(Barrier Free)」 とは障壁と自由を合成した単語だ。社会的弱者がともに生活できるように物理的・制度的障壁を取り壊そうということでもある。
Kコンテンツが国境を越えて世界的に愛されているが、障がいを抱えるファンたちがライブなどを完全に楽しむにはまだまだ壁が高いのが現実だ。
韓国では4月20日が「障がい者の日」と制定されている。『スポーツソウル』では障がい者抱えるファン、観客、視聴者たちがコンテンツを楽しめる方法と、依然として抱える課題条件について考えてみた。
音楽は言語と文化の壁をも崩す。K-POPが世界的に人気を集め、アイドルグループも音楽を通じて多様なファンと出会ったが、障がいを持つK-POPファンはどうだろうか。
障がいを持つ人々にとって「オタ活」は容易ではない。数年前までは、障がいを抱えたファンが大衆文化公演で一般客と同等の観覧権を保障されること自体が難しかった。
企画会社と公演場ごとに、車椅子席の数や手話通訳の帯同などの施設規定が異なり、前売りチケットの確保に成功しても障がい者ファンは自ら不利益を甘受しなければならなかった。一部の公演場では招かざる客扱いを受けねばならなかった。
ただ幸いなことに、最近は大型の芸能会社を中心に「バリアフリー」の動きが起きている。
昨年9月、ソウルの高尺(コチョク)スカイドームで開かれたBLACKPINKのワールドツアーでは、車椅子を利用した公演場までの移動動線を盛り込んだ映像が制作された。昨年12月、ソウルのKSPOドームで開かれたTREASUREのコンサートでも、メンバーたちが直接、バリアフリー関連の案内音声を録音し、好評を得たりもした。
これに先立ち、手話の振り付けで話題を集めたBTSのヒット曲『Permission to Dance』は、手話に対する認識を変える重要なきっかけとなった。
2022年3月にソウル五輪メインスタジアムで開かれた『BTS Permission to Dance on stage SEOUL』では、聴覚障がい者ファン2人のために、手話通訳士2人が共に参加したことが知らされて多くの話題を集めた。
このように韓国では4大芸能会社が障がい者ファンが健常者と同等にコンサートを楽しめるように、多方面で努力している。車椅子を使う障がい者の場合、電話予約および別途の相談センターを経て予約できるように案内しており、聴覚障がい者のための手話通訳士の配置も肯定的に検討中だ。
HYBEは2016年、BTSコンサートのチケットを予約した聴覚障がい者ファンの要請で、公演会場での手話通訳サービスの運営を始めた。現在も公演会場の手話通訳サービスを無料で運営している。
公演場所や現場の状況によって流動的だが、SMエンターテインメントは車椅子の観覧客のための現場進行チームを割り当て、彼らがチケットの受け取りから公演会場への入場、退場まで円滑な観覧のために同行している。JYPエンターテインメントも予約顧客センターを通じて、有線での車椅子席の予約を受け付けており、同伴者1人も隣の席で一緒に予約できるように提供している。
YGエンターテインメントは今年3月、韓国のエンターテインメント会社の中で初めて「持続可能な公演報告書」を発刊した。
障がいを持つ観客に移動経路を案内し、移動過程を支援する「アクセシビリティマネジャー」の確保のために、韓国視覚障がい者連合会などの専門機関との協業も進めた。視覚障がいを持つ観客のために、前売りチケット販売サイト下段に視覚障がい者用詳細公示も設置している。
BTS、BLACKPINKなどグローバルスターが直接、バリアフリーの歩みに参加することで、障がいを持つ観客に対する認識が改善される傾向にあると言えるだろう。
しかし、まだまだ道のりは長い。
海外コンサートでは聴覚障がい者のための同時字幕や手話・文字通訳サービスを提供することが慣例だが、韓国では手話通訳や文字通訳サービス提供が拒絶される事例が多い。
コンサートのチケット争奪戦も激しいため、視覚障がい者には情報不均衡という壁がある。車椅子席はあるもののも電話や相談センターに問い合わせなければならず、それだけに言語障害がある人々には「チケットは高嶺の花」となる。
障がい者の移動圏コンテンツを製作するホン・ユンヒ理事長は、「相対的に導入が容易な字幕サービスに対する関心が不足している。コンサート会場のスクリーンに字幕ができれば美学的に邪魔になるかもしれないが、K-POPのグローバル化に歩調を合わせて、誰もが同じように文化生活を営むことができるように努力しなければならない」と話す。
ホン理事長の娘は車椅子利用者で、K-POPのファンでもある。「娘は韓国の国内公演場の車椅子席をすべて知っている。公演会場に車椅子席があっても必ず運営しなければならないという強制規定がなかったが、最近、高尺ドームでは車椅子席を必ず運営しなければならないと規定を変えた。このような大型公演場で先導的に内部規定を作り、障がい者の観覧権に対する心理的ハードルを下げることは意味があると思う」と話した。
公演主催者側だけでなく、公演会場、前売りサイトなど公演関連業界の関心と努力も重要だ。
ホン理事長は「K-POPのグローバル化に歩調を合わせ、国内だけでなく海外の障がい者ファンまで包容できるグローバル基準の確立が必要だ。チケット予約サイトと芸能会社が協力して、オンラインで車椅子席を予約できる手続きを補完する必要がある」と声を高めた。
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