それが韓国にも伝わっているのだが、「日本に比べると満足できる条件ではない」というわけだ。
もっとも、冷静に考えるとかなり好条件で契約更新したのではないだろうか。
KFAとナイキ・コリアの契約金は、2003年から2007年までの5年間で計380億ウォン(約38億円)、2008年から2011年までの4年間で490億ウォン(約49億円)、2012年から2019年までの8年間で1200億ウォン(約120億円)だった。
毎回、年間契約料が増加していることがわかる。特に今回は、前回契約時よりも年間で50億ウォン(約5億円)アップだ。
しかも、今後12年間はオフィシャル・サプライヤーに困らない。
例えば野球韓国代表の場合、2006年WBC、2008年北京五輪、2009年WBCなどはナイキ・コリアと契約していたが、2013年WBCで期待外れに終わったあとは、契約延長には至らなかった(代わってデサントが大型契約を提示したこともあるが)。
だが、KFAは今回の契約延長で「ワールドカップ出場に失敗したり期待外れに終わると、スポンサーも離れてしまう」という心配や不安を抱く必要がなくなった。
ワールドカップ9大会連続出場中の韓国といえども、今後もワールドカップに出場できるという保証はないので、むしろ12年の長期契約は大きなサポートになるはずだ。
日本サッカー協会とアディダス・ジャパンが交わした大型契約を引き合いに出すのも、ナンセンスだろう。
一部のサッカーファンたちが何かと日本を意識したり、比較対象にしてしまう気持ちもわからなくもないが、そもそも両国には開きがある。
2020年の年間予算はJFAが195億円、KFAは963億ウォン(約96億円)といわれている。それほど日本と韓国とでは、サッカー市場の規模が異なるのだ。単純比較はできないだろう。
それにKFAは最近、苦い経験もしている。
昨年末、KFAはKリーグと共同で韓国代表Aマッチ中継権とKリーグの中継権をセットにした“統合中継権”を販売すると発表した。
代表Aマッチを抱き合わせにして、中継権販売に苦戦するKリーグをアシストしようという狙いが見え隠れした“セット販売”で、年間最低入札額を250億ウォン(約25億円)と設定したが、第一次入札締め切り期日までにその条件を提示した業者が現れず、第二次入札でも条件をクリアする業者は皆無だった。
仕方なくKリーグの中継権のみをJTBCに与えることを決めているが、KFAにとっては韓国サッカーの市場価値にやや自信をなくす一幕だったことだろう。
それだけに今回の大型契約はKFAにとって長期の安心や巨額の契約金だけではなく、自信回復にもつながる好条件だったことだろう。個人的にはそう思うのだが…。
(文=慎 武宏)