去る6月28日、忠清北道(チュンチョンブクト)鎮川(チンチョン)の国家代表選手村にある射撃訓練場でのことだ。
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“韓国射撃の皇帝”の別名を持つ射撃韓国代表チン・ジョンオ(41)が10mエアピストルの練習に集中していた際、訓練場に米津玄師の新曲『Pale Blue』が流れた。同曲以外にも、J-POPのヒット曲がいくつか流れていた。
韓国射撃連盟の関係者に話を聞くと、「日本現地の雰囲気を出すため、数日前からオリコンチャートにランクインしている曲を流している」という。ただスピーカーでJ-POPを流しているだけだったが、確かに、ほかの練習場と比べて現地の雰囲気を少しばかりは感じることができた。
2004年アテネ五輪から2016年リオ五輪までオリンピック4大会に出場し、金メダル4つと銀メダル2つを獲得した“韓国射撃の生きる伝説”チン・ジョンオは、東京五輪に出場する韓国選手団のなかで最年長者であり、最多五輪経験者だ。「年齢と同じぐらいに肩も重い」と言う彼は、「最年長者として新型コロナウイルス感染症の防疫規則を守りながら、後輩をしっかり率いて帰ってくる」と決意を語る。
多くの射撃関係者は、東京五輪がチン・ジョンオにとって最後のオリンピックになると予想している。
ただ、当の本人は考えが違うようで、「代表としては今回が最後のオリンピックになるかもしれないが、2024年パリ五輪の代表選抜戦までは挑戦してみたい」と明かした。心を鬼にして東京五輪出場権を獲得したように、トップレベルのパフォーマンスを維持できるまで銃を持ち続けたいという意思の表れだった。
「今でも銃を撃つことができて幸せだ」と話すチン・ジョンオは、「(年齢を重ねるにつれて)目がかすみ、筋力や集中力が落ちる面がある。そのため、技術よりも体力の管理に重点を置いている」と、ルーティンに変化を加えていることも伝えた。
チン・ジョンオは2004年アテネ五輪50mピストル銀メダルを皮切りに、2008年北京五輪50mピストル金メダルと10mエアピストル銀メダル、2012年ロンドン五輪50mピストルと10mエアピストルで金メダルを獲得し、前回の2016年リオ五輪で50mピストル3連覇を達成するなど歴史を築いてきた。
自身のメイン種目と呼ばれた50mピストルは東京五輪で廃止されたが、10mエアピストルを通じて韓国勢個人歴代最多の7つ目のメダル獲得に挑戦する。
チン・ジョンオは「最多メダル獲得数や4大会連続金メダルに欲がないと言えば嘘だ。しかし、そのようなタイトルに執着してしまえば、試合は台無しになってしまうだろう」と、邪念を振り払って銃を持つことを強調した。
今回のオリンピックは新型コロナの影響もあり、例年と異なる難しさを持つ。チン・ジョンオは「射撃選手は(銃を撃ちながら)途中で呼吸しなければならないが、マスクをすると眼鏡が曇り不便なことがある」とし、「とある人はマスクを鼻の下まで下ろしていいとも言っていた。オリンピックでは公平なルールのもとで競技を行ってほしい」と伝えた。
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