「“指導者”ホン・ミョンボは以前よりも成熟しました」
蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)を率いるホン・ミョンボ監督の“魂のパートナー”と呼ばれる池田誠剛首席コーチが、長い間喜怒哀楽をともにしてきた指揮官について惜しみなく語った。
フィジカル専門家の池田コーチは、2010年代の韓国サッカーで中心的役割を果たしたFWパク・チュヨン(37、蔚山現代)、MFキ・ソンヨン(34、FCソウル)、MFク・ジャチョル(33、済州ユナイテッド)など、“ホン・ミョンボの子どもたち”と呼ばれた選手が成長するうえで欠いてはならない存在だった。
池田コーチは、ホン監督の本格的な指導者生活の第一歩となった2009年U-20韓国代表時代、初の日本人コーチとして合流。指揮官が重視する強い体力、効率的なコンディション管理において革新的な役割を果たした。
特に「韓国の選手は深層筋のバランスが良くない」とし、オーダーメイド型のトレーニングプログラムを実施したことでも知られている。
以降、ホン監督と池田コーチは苦楽を共にしてきた。
2009年U-20W杯でのベスト8はもちろん、2012年ロンドン五輪ではU-23韓国代表を史上初の銅メダルに導くなど、輝かしい成績を収めた。
2014年にはA代表で意気投合し、ブラジルW杯本大会の舞台も踏んだが、結果はグループステージ敗退と初めて失敗を経験した。
2016~2017年には中国の杭州緑城でも監督とコーチの関係を築いた。その後はホン監督が韓国サッカー協会(KFA)専務理事に就き、池田コーチもFC今治やサンフレッチェ広島のフィジカルコーチを務めたため、ともに仕事をすることはなかった。
それでも、2021年にホン監督が蔚山現代の新監督に就任し現場復帰すると、翌2022年には池田コーチが指揮官のオファーを受けて蔚山現代で再会。同年シーズンのKリーグ1(1部)優勝の歓喜をともに味わった。
本紙『スポーツソウル』の取材に応じた池田コーチは、“クラブの首長”ホン・ミョンボと仕事をすることについて「より大きな魅力を感じます」と切り出した。
そして、「そもそも、ホン監督と働きたかったのは同じ価値観のためです」と言うと、次のように続けた。
「代表チームは監督とコーチ陣が相談し、選手を選抜して運営しますが、クラブは歴史やカラーなどを考慮しなければならない。そのような点で、(監督とコーチの間で)トラブルが発生する可能性もありますが、価値観が似ているのでそのようなことはありません」
「どんな価値観がよく合っているのか」という質問には、「上手な選手より、チームのために献身する選手をもっと重要に思うこと」と答えた。
実際、昨季リーグ戦で蔚山現代が17年ぶり優勝を果たせたのは、“スター軍団”のリスクの一つである「主力ではないメンバーに対するマネジメント」が上手く行われたのが大きかった。
蔚山現代で久しぶりにホン監督と手を組んだ池田コーチは、「“指導者”ホン・ミョンボは以前よりも成熟しました」と言う。
「ロンドンで良い成績を収めました。ブラジルでは良くなかったですが、失敗とは思いません。世界中の名将も成功と失敗を経験し、良い指導者に生まれ変わるものです」
「ホン監督は(蔚山現代以前に韓国サッカー協会で)専務理事として働き、代表やクラブを一歩引いた立場で見たはず。そのような経験が、戦術以上にチームマネジメントレベルを高めた契機になったと思います」
「蔚山現代は優勝しなければならないチームです。選手は一試合負けたときに大きな心理的プレッシャーを感じていましたが、ホン監督はこれを非常に賢く扱った。予測と臨機応変を基にリスクマネジメントをとても良くやりました。その結果、昨季の蔚山は連敗が少なく、優勝という成功まで収められました」
そんな池田コーチは、近年の韓国サッカーがすべての世代で日本に押されている現象についても忌憚なく話した。
彼はテーブルに置かれた水筒を手で倒し、こんな例を挙げた。
「韓国はこれまで、このように“バンッ”と一気に倒すことが得意でしたが、今は(テーブルの上から)落ちてしまわないか心配です。猪突性が低下したことで、技術を重要視することになると、このような現象が発生します」
「以前は日本がそうでしたが、今は変わりました。技術だけではダメだと思います。“チームのためにプレーしなければならない”という思いから猪突性が生じました。実際、チームワークや組織力をベースに技術やスピードを満たさなければなりません」
最後に、「現在の韓国は技術に視線が集中し、強みである猪突性と組織力を失ったように思います」とキッパリ述べた池田コーチは、「ですが、それは試行錯誤に過ぎず、いずれ改善されると思います」と付け加えた。
(文=ピッチコミュニケーションズ)
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