ロサンゼルス・エンゼルスを率いるジョー・マドン監督は以前、アメリカン・リーグのMVPについて問われた際、「私にとっては僅差でもない。彼に迫っている選手はいない」とし、大谷翔平(27)の受賞が当然だと自信を示したことがあった。
では、9月22日現在、マドン監督の発言は依然として有功だろうか。大谷がMVPの有力候補であることは間違いないが、彼を取り巻く雰囲気が変わりつつある。
最近ではトロント・ブルージェイズのウラジミール・ゲレーロ・ジュニア(22)が安定して好調を維持しているが、大谷はスランプ気味にある。
加えて、ブルージェイズがワイルドカード争いを続けている一方、エンゼルスはポストシーズン進出の可能性が消滅しており、勝率5割到達も難しい状況にある。
MVP(Most Valuable Player)の本来の意味に沿えば、ゲレーロ・ジュニアの受賞が妥当とも言える。ただ、大谷が全米野球記者協会(BBWAA)から高い評価を受けている最大の理由は、彼が米メジャーリーグ(MLB)の歴史上、誰も歩んだことの内容な道を築いているからだ。
それがほかならぬ“二刀流”だ。大谷の活躍を受けてベーブ・ルースが引き合いに出される背景もここにある。
とある記者は「ブルージェイズがゲレーロ・ジュニアのMVP受賞をプッシュしたいのであれば、一つ方法がある。投手をやらせればよいだけだ」とジョークを飛ばした。それだけ、BBWAAが大谷の二刀流の活躍に傾きすぎたことを皮肉る発言でもある。
また、かつてブルージェイズでもプレーしたジョシュ・ドナルドソン(35、ミネソタ・ツインズ)は、今季MVPについて問われた際、「毎試合のインパクトある活躍を見れば、誰がMVPに相応しいか答えが出る」とし、ゲレーロ・ジュニアがもらうべきだと正当性を強調した。ドナルドソン自身、2015年にMVPを受賞している選手だ。
最近の大谷は苦しんでいる。本塁打部門でもここまで44本と、首位の座を各46本のゲレーロ・ジュニアとサルバドール・ペレス(31、カンザスシティ・ロイヤルズ)に奪われた。
投手面では20日のオークランド・アスレチックス戦で先発登板し、8イニングを投げて5被安打、10奪三振、2失点の好投を披露したが、現地ではこの試合が今季最後の登板となる可能性も示唆されている。
8月1日以降の大谷とゲレーロ・ジュニアの打撃成績は対照的だ。
大谷は154打数で打率0.200、7本塁打、出塁率0.331、長打率0・367、OPS(出塁率+長打率)0.698。一方、ゲレーロ・ジュニアは193打数で打率0.305、13本塁打、出塁率0.383、長打率0.537、OPS 0.920だ。
ゲレーロ・ジュニアに活躍でブルージェイズは9月に15勝4敗を挙げ、最高勝率を維持し、ア・リーグのワイルドカード争いの版図を塗り替えた。対するエンゼルスは72勝78敗。ここに6敗を加えると、勝率5割以下でシーズンを終えることになる。
ゲレーロ・ジュニアは通算打率3.20、178安打、46本塁打で各部門の首位に立つ。ただ、打点は首位のペレス(115打点)と10本差の4位タイ(105本)につけている。
ペレスはア・リーグのMVP争いに突如飛び込んだ伏兵だ。ペレスは46本塁打で捕手のメジャーリーグ史上最多本塁打記録を更新。1970年にシンシナティ・レッズのジョニー・ベンチが45本塁打を記録して以降、約50年ぶりに歴史を塗り替えた。記者団はMVP投票の際、新記録樹立も重要な物差しとして考慮している。
明らかに言えるのは、ア・リーグのMVP最終候補が大谷、ゲレーロ・ジュニア、ペレスの3人に絞られる可能性が非常に高いということだ。
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