「スポーツ心理学的に解釈してもキ・ソンヨンは極めて異例だ」
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スポーツ心理学の権威者である仁荷(インハ)大学スポーツ心理学のキム・ビョンジュン教授が、元サッカー韓国代表MFキ・ソンヨン(32、FCソウル)の“メンタル面”について分析した。
キム教授は、去る2007~2008年にシェノル・ギュネシュ監督(現トルコ代表監督)がFCソウルで指揮を執っていた際、チームのスポーツ心理カウンセラーを務めた経験がある。当時のチームには、イ・チョンヨン(32、蔚山現代)とともに「次世代のスター」「チームの未来」と注目を集めた10代の頃のキ・ソンヨンがいた。
並外れた才能とメンタルを兼ね備えたルーキーを至近距離で見守ったキム教授は、最近、ピッチ外の雑音に巻き込まれながらも活躍を続けるキ・ソンヨンを興味深く見ているという。
キム教授は、「キ・ソンヨンが困難な状況でも自身のパフォーマンスを発揮しているのは、本当に大選手にあり得そうなケースだ」と分析した。
キ・ソンヨンは今シーズン開幕直前、小学生時代にサッカー部の後輩に性的暴行を加えた疑惑が浮上し、苦しい立場に立たされた。現在、キ・ソンヨンは自身に持たれた過去の疑惑を完全否定し、今後の法的措置を予告している。
韓国スポーツ界で話題となった“学生時代のいじめ”と関連した事案であるだけに、普通ならば日々のトレーニングや試合に集中することは難しいはずだ。ところが、キ・ソンヨンはそんななかでも驚異のパフォーマンスを発揮し続けている。
キ・ソンヨンは第2節の水原FC戦でソウル復帰後初アシストを記録すると、直近2試合(仁川ユナイテッド戦、光州FC戦)連続で決勝ゴールをマークし、チームに勝利をもたらした。
特に、光州FC戦の前日には自身の性的暴行疑惑に関連した報道番組が放送。番組内では被害者と主張する人物の告白が主に取り上げられたことで、キ・ソンヨンの疑惑が再燃していたタイミングだった。ただ、こうした周囲のざわつきにもキ・ソンヨンはものともしなかった。
キ・ソンヨンは試合後、「僕はプロ選手だ。どんな状況でもピッチ上で揺れ動いてはならない。特に今のような場合は、もっと精神的に集中しようとしている。ピッチ上で最善を尽くし、良い姿を見せることが僕の果たすべき役割だ」と気丈に話していた。
この活躍で、今度はキ・ソンヨンの“鋼のメンタル”が話題になった。キム教授をはじめとする専門家たちも、彼の精神力には思わず舌を巻いた。
キム教授は「概して敏感なスポーツ選手は、こうした議論に巻き込まれるとただ謝罪をして崩れてしまうか、最悪“極端な選択”をしてしまう場合が多い。しかし、精神力が強く大きな経験をした選手は、“騒ぎ”と“パフォーマンス”を分離して思考するメンタルに長けている」と説明した。
続けて、キ・ソンヨンは自身の信念と行動を連結される理論である“計画的行動理論(TPB)”と非常に合致するタイプであることも言及した。
「TPBが優れているのは概してトップクラスのスター選手だ。例えば過去にも、男子ゴルフのタイガー・ウッズが自身に向けられた論争の中でも再び自分のパフォーマンスを取り戻し、復活したではないか」
「キ・ソンヨンも、ビッグリーグで様々な噂の中でもプロらしくピッチ上で素晴らしいパフォーマンスを発揮する選手をたくさん見てきたはずだ。彼も成長するにつれてそれが自然と身についたのだろう」
キム教授は、TPBの遂行力が優れていればスポーツ心理学的に妨害行動を統制する能力が伴うことも強調。「信念通りに何かするには、妨害行動を統制できる自信がなければならない。キ・ソンヨンは議論を避けることはせず、これを統制する自信を持っている」と話した。
それとともに、「(鋭敏な)スポーツ選手は刺激を与えたら覚醒反応が目立つ。これはすなわちエネルギー水準が高くなるが、ただ嫌気がさす選手もいるが、トップクラスの選手はその刺激をさらなる運動遂行力の向上に使うこともある。これにおいてもやはり、(感情的に)統制力に優れ、自信を持っていることを証明するうえで、キ・ソンヨンがぴったりと一致している」と付け加えた。
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