韓国の務安(ムアン)国際空港で発生した惨事を引き起こしたB737-800型機が短期間で休む間もなく運航していたことが明らかになったなか、済州(チェジュ)航空の職員たちが匿名コミュニティを通じて今回の事故が「予見していた」として話題だ。
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済州航空の整備環境が劣悪で、機体の故障が頻発していたという証言が相次いでいる。
済州航空は2022年11月、日本の関西国際空港でバードストライクによる緊急折り返しを行ったが、その際、「エンジン故障を隠蔽するため、バードストライクとして虚偽報告した」との疑惑がオンラインコミュニティで浮上したことがある。
そのような懸念が積み重なった結果、務安国際空港で179人が犠牲(韓国国内航空機事故史上最大被害)となった航空機事故が発生したという見方が持たれている。
済州航空の航空機は、事故直前の48時間、すなわち2日間で8つの空港を訪れ、13回の運航を行っていたことが判明した。
運航時間は最短38分、最長で6時間に及び、短距離路線であればこのような運航スケジュールも業界では見られるものの、不安を拭いきれない。
今回の事故機は2009年9月に運航を開始し、機齢15年とされるが、老朽機には分類されない。一般的には機齢20年以上が老朽機とされる。
しかし、航空専門家たちは機齢よりも実際の飛行時間や離着陸回数が影響を与えると指摘し、短距離飛行が多い場合、機体疲労が増加し、老朽化が早まると警告している。
済州航空の月平均運航時間は2023年第3四半期基準で418時間であり、大韓航空の355時間より18%多い。LCC(格安航空会社)のなかでも済州航空の稼働時間は高く、ジンエアーの371時間と比較しても12.7%多い。
これに対し、済州航空のソン・ギョンフン経営支援本部長は事故後のブリーフィングで「無理な運航とは言えない。計画されたスケジュールに基づき、航空機の整備を徹底して行っており、出発前後に細かく点検している」と述べた。
しかし、済州航空の惨事が調査を始めたばかりの段階で「この問題は航空機整備の不備とは関係がない」と発言し、議論を招いた。
済州航空のキム・イベ代表取締役も「航空機は継続して整備されており、異常の兆候は全くなかった」と主張したが、事故原因の究明において整備不備や機体・部品の欠陥の有無は必ず確認されるべき事項である。
済州航空は2005年に設立され、現在は韓国LCCの中で最大規模を誇る。市場占有率は15.4%で大韓航空に次ぐ国内2位、国際線市場占有率は9.8%で大韓航空、アシアナ航空に次ぐ3位である。急速に成長した一方で、安全性に関する問題は常に議論の的となってきた。
2021年、済州航空は国内航空会社の中で総合安全性スコアが最下位(C++)を記録した。このため、国土交通部(日本の国土交通省に相当)は済州航空の航空安全監督官を2倍に増員するなど、監督を強化した。
当時、済州航空は損傷した補助翼を発見できないまま運航し、国土交通部から制裁を受けた。また、2019年には金海(キメ)国際空港を離陸した金浦行き旅客機が、機体ソフトウェアの欠陥により金海国際空港に折り返した事件も発生している。
今回の衝撃的な惨事を受け、母体財閥である愛敬(エギョン)グループのチャン・ヨンシン会長は公開謝罪文を発表。「大切な命を失わせることとなった今回の事故で、多くの方々が経験している悲しみと苦しみに深く共感し、その責任を重く受け止めている。遺族の皆様に心からお詫び申し上げる。衝撃と悲しみを共有している国民の皆様にも謝罪申し上げる」と頭を下げた。
今回の事故を受け、再発防止に向けたLCCの運営と整備状況の総合的な点検が必要だという声が高まっている。
また、滑走路の外壁や鳥の群れとの衝突に対する対策としてドローンの活用も議論されるべきだ。さらに、調査主体である国土交通部自体も調査の対象となるべきだと指摘されている。
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