東方神起や少女時代、SHINeeやEXOといったK-POPグループを次々と世に送り出してきた韓国の大手芸能事務所SMエンターテインメントで、職員による不正行為が発覚して波紋を呼んでいる。
各メディアが報じた内容によると、同社で楽曲制作を担当するA&R(Artists and repertoire)のユニット長だったA氏が、会社にバレないよう妻が書いた歌詞を所属アーティストの曲に採用していたことが発覚し、懲戒を受けたという。
韓国音楽著作権協会が確認した結果、A氏の妻の歌詞が採用されたのはBoAやEXO、EXO-CBX、BAEKHYUN(ベクヒョン)らが歌った全15曲。A氏は不正を疑われないように、著作権リスト(クレジット)には1つの信託コードにつながった3つの名前を交互に使用していたという。
今や世界で人気を誇るK-POPだけに、著作権料にも大きな金額が発生する。その上、最近は1曲に対して複数の作曲・作詞家が関わることも増えており、A氏のように不正を働く者が出やすくなったという。
大ヒット曲を1曲でも生み出せば、作詞・作曲家が悠々自適な印税生活を送れるほど儲かるともされるのが、昨今のK-POPの現状だ。その一例としてK-POP界の「桜年金」が挙げられる。
桜年金とは、3人組のバンドであるバスカー・バスカー(Busker Busker)の楽曲『桜エンディング』(2012年発売)が、毎年春になれば必ず韓国の音楽チャートの上位にランクされる現象によって生まれた造語だ。
作詞・作曲を手がけたメンバーのチャン・ボムジュンが得ている莫大な収入を比喩した言葉とも言えなくもない。チャン・ボムジュンはこの1曲だけで年に約10億ウォン(約1億円)の著作権料を得ており、一生金に困らない生活を手に入れたということで、「桜年金」というわけだ。
ただ、K-POP界にはチャン・ボムジュン以上に著作権料を稼いでいるアーティストが多い。K-POアイドルグループの中にも印税長者は多く、最近だとTWICEやNiziUのプロデューサーとして日本でも有名なJ.Y.Parkもその1人だろう。
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J.Y.Parkの場合、2011年から2013年の3年連続で音楽著作権収入1位を記録した。韓国音楽著作権協会(以下、協会)の集計によると、2013年にJ.Y.Parkが儲けた著作権料は13億1000万ウォン(約1億3100万円)だったという。
また、著作権料を語る上でBIGBANGのG-DRAGONも外せない。BTSのプロデューサー、パン・シヒョク氏も「嫉妬を感じる」と言うほど天才的な才能を持つ彼は、2020年時点で174曲を協会に登録している。年に約14億ウォン(約1億4000万円)の著作権料を得ているそうで、「息をするだけでお金が入る」と言われるほどだ。
協会は毎年2月、1年間で最も多く著作権料を得た人を称える「著作権大賞授賞式」を開催するが、今年の作詞・作曲部門の大賞者はBTS(防弾少年団)の楽曲を手がけたPdoggだった。
彼はアメリカのビルボードのアルバムチャートで首位を獲得した『Boy With Luv (feat. Halsey)』のほか、『Spring Day』『FAKE LOVE』『On』『Life Goes On』など、BTSの代表曲を作詞・作曲。具体的な著作権料は明かされていないが、やはり億単位の収入を得ているとみられる。
それだけにストリーミングやYouTubeなど、著作権料を得られるプラットフォームが増えた今、韓国ではK-POPの著作権が財テクの手段にもなっているらしい。
すでに音楽の著作権を金融商品化し、取引サービスを行う企業も登場した。企業が発売から2、3年が経過した人気曲の著作権の50%を買収し、それを株式のように分割した後、会員を対象に取引を行う。K-POPが投資商品になる時代が来るとは、10年前に誰が想像しただろうか。
まだまだ勢いが衰えるどころか、ますます変化し続けているK-POP。冒頭で紹介したような不正が続発して自らイメージを落とさなければ良いのだが…。
(文=慎 武宏)
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