森保ジャパンを下した“韓国のピルロ”が、ゴール後に日本サポーター席に向かった理由

試合後、監督記者会見を見届けてミックスゾーンに向かうと、大勢の韓国人記者に囲まれたファン・インボムの姿があった。

その輪に混じって話を聞いたが、「今大会でダメだったら本当に淘汰されてしまう恐れもある。自分から言い訳を作るのだけはやめようという覚悟で準備した」という。

また、ゴール後のパフォーマンスについて問われると、「決めた瞬間に思い立って日本サポーターの応援席のほうに向かってサンチェク(散策)セレモニーをすることにした」という。

“散策セレモニー”とは、2010年5月にさいたまスタジアムで行われた日韓戦で、試合開始直後にゴールを決めたパク・チソンが日本サポーターたちの前を悠々と走り抜けたパフォーマンスで、韓国では“韓日戦の象徴的パフォーマンス”ともいわれている。

昨年のアジア大会決勝ではファン・ヒチャンが同じようなパフォーマンスを見せたが、ファン・インボムもそれに続いたわけだ。

「友人であるヒチャンもしていたので。ただ、スタンドに駆け寄ってみると韓国サポーターのほうが多くて当惑した。それでちょっと不自然なセレモニーになってしまった」

ちなみにファン・インボムとファン・ヒチャンだけではなく、今大会の最優秀DFに選ばれたキム・ミンジェ(北京国安)やナ・サンホ(FC東京)も1996年生まれ。4人とも前出したSBSカップに出場しており、今では韓国代表に定着している。

キム・ミンジェ

以前、ナ・サンホにインタビュー取材したとき4人の仲について聞くと、「よくカカオトークでやりとりしています。僕は日本、ミンジェは中国、ヒチャンはオーストリア、インボムはカナダですから、時差がまったく合わず既読スルーされることも多いですけどね」と笑っていたが、この1996年組の活躍と成長は韓国サッカーの希望だろう。

ただ、その割には大会を通じて観客席に空席がかなり目立ったのは残念だった。昨日の日韓戦も今大会最高とはいえ、2万9252人。これまで数多くの日韓戦に立ち会ってきたが、“歴史に残る少なさ”だった。

韓国が3連覇を果たしたが、ソン・フンミンら欧州組不在では興行にならない韓国サッカーの厳しい現実を露呈した大会であったことも間違いない。

(文=慎 武宏)

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