「WBCに備えるための意味もありますが、韓国の野球を目の前で一度見てみたかった。プレーオフ第1戦をチェックしようと決めていたわけではなく、日程上、今日と明日の試合を見ることになりました」
「イ・ジョンフやキム・ヒョンスは長い間チェックしてきた選手です。アメリカに行ったときはキム・ハソンがプレーするのも見ました」
また、「韓国の主要な選手は皆知っています。今、この場で特定の選手については言及しません。勝敗がかかった重要な試合でどんなパフォーマンスを見せるのかをチェックしたく、ポストシーズンの試合を見に来ました」と続けた。
その韓国プロ野球でいま最も話題に上がる選手と言えば、キウムの投手アン・ウジン(23)だろう。
レギュラーシーズンで30試合196イニングを投げ、15勝8敗の防御率2.11、224奪三振を記録した。防御率、奪三振数のいずれもリーグ1位の数字だ。準プレーオフでも2試合に登板して12イニングを投げ、1勝、17奪三振、防御率1.50を記録した。
実力だけを見れば、十分に野球韓国代表に選ばれる資格はある。現在の韓国プロ野球で最も強力な選手と言えるだろう。
しかし、アン・ウジンには“学生時代のいじめ”をめぐる議論がついて回っている。
アン・ウジンは韓国野球ソフトボール協会(KBSA)の懲戒を受け、韓国代表に選抜される資格ない。国内野球ファンの視線も依然として冷たい方だ。WBCの場合はKBSAではなく、韓国野球委員会(KBO)が主管となるため招集自体は可能だが、世論の顔色を窺わざるを得ない。
栗山監督は「さまざまな事情があることは聞いている。日本代表監督としては、良い投手が出ないことはある意味で良いことです」としつつも、「それでも、若い選手が世界の舞台で活躍する姿を見てみたい。生きていくうちに色々なことが起こり得るのではないでしょうか。若い選手が一人でも多く出てきて、上手くいくように応援しています」と自身の考えを示した。
国籍が違うとはいえ、栗山監督は一選手の未来を語った。野球のグローバル化という目的を見たとき、良い選手が一人でも多くプレーすることは良いことだ。韓国プロ野球も悩んでいる状況で、日本代表監督もエールを伝えた。
韓国は2013年と2017年のWBCで“惨事”を味わった。まさかの2大会連続での第1ラウンド敗退だ。特に、2017年は自国の高尺(コチョク)スカイドームで第1ラウンドを戦い、ホームで恥をかいた。それだけに、6年ぶり開催となるWBCで狙うは名誉回復ただ一つだ。
来年3月に行われる予選で、日本と韓国は同じ組に入った。同年3月10日に東京ドームで激突する。
最大のライバルと言える日本に立ち向かうには、国内で絶好調のパフォーマンスを見せるアン・ウジンの存在は必須だ。栗山監督も期待を寄せる好投手は、はたしてWBCで野球韓国代表として侍ジャパン相手にマウンドに上がるのだろうか。